恋は、苦しい1


【side えみ】




あの日見た希帆ちゃんとはまるで別人ね。

大輔先輩の横で品のある笑顔を振りまく希帆ちゃんを見てうんざりした。

そう思いながらも私も岩ちゃんの隣で同じように笑顔を振りまく。

パーティーって疲れる。

早く帰ってお風呂入りたい……

なんて思っているからだろうか?




「えみちゃん、今日はありがとう!」




ポール店長の大輔先輩が私のところまでわざわざ挨拶に来た。

相変わらず素敵な大輔先輩。

悔しいな、先輩の隣にはいっつも希帆ちゃん。

私も一度くらいは隣に立ちたい。




「大輔先輩こそお疲れ様です。挨拶回り大変ですよね」




私の言葉に目を細めてニッコリ微笑んだ。

その優しい笑顔は学生の頃から何一つ変わっていない。

私が大好きな、笑顔。




「岩ちゃんとえみちゃん、美男美女って。岩ちゃんのパートナーはどこの部署の人か?って俺散々聞かれたよ。さすがえみちゃんだね!」




ポンっと、一つ大輔先輩の手が頭に落ちる。





「いえいえ、見ない顔だからって皆さん気を使ってくれているんですよ」

「そんなことないって。えみちゃんは昔っから俺の自慢の後輩だったもん!」




嬉しくないわけじゃないけど、私が求めている言葉とはかけ離れている。





「彼女の前で他の女性誉めちぎるのNGですよ?眞木さん…」




岩ちゃんが大輔先輩の触れた手を剥がすように、軽く私を引き寄せる。

その視線の先、希帆ちゃんがほんの少し面白くなさそうな顔をしていて…




「え、希帆とえみちゃんは違う人だし、そんなことぐらいで希帆は怒らないって。ね?」

「…うん。大輔のこと信じてるから!」




ギュっと勝ち誇ったような顔で先輩の腕に絡みつく。

見慣れているはずのその光景。

でも何だか心が痛くて。

自分で思う以上に私、大輔先輩のこと好きなのかもしれない…――――そんなことが頭に浮かんだなんて。




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