悲しいズレ1


「ゆき乃さん!どーいうこと?健二郎さん泊めたって!!」



お昼休み。

たまたま時間があって社内にあるビュッフェでご飯を食べていたあたし達。

前に座っているゆき乃先輩目掛けてやってきた今市隆二くん。



「なに?」

「なに、じゃないよっ!なんで俺のこと呼ばねぇのっ!?なんで俺以外の奴と寝るのっ!?」



急に言われてあたしはタラコパスタを吹き出しそうになった。

ゆき乃先輩は冷静で隆二をジッと見つめている。



「怒ったの?」

「怒るよ!俺だけじゃ不満?俺だけじゃ眠れない?いつも傍にいるって言ったじゃん俺…頼むから俺以外の奴と寝ないで…」



ゆき乃先輩の手を握って膝まづく隆二に「TPOがないわよ、隆二。ゆき乃の立場全く考えてない…」えみ先輩が呆れた顔で大きく溜息をついた。

顔をあげた隆二は泣きそうで。

すごくゆき乃先輩を愛してるんだって分かる。

分かるけど…――――――



「寄せよ隆二、こいつのこと縛るなって」



声をかけたのは片岡さんだった。

ゆき乃先輩の腕を引っ張って立たせると「ちょっと借りるよ、えみ!美月ちゃん!」連れて行ってしまった。

ざわつくフロアの中、「離して」って言わないゆき乃先輩にちょっとだけ嬉しさを増す。

ごめんね、隆二。



「えみさん、俺どーしたらいい?」



泣きそうな顔のままえみ先輩を見ている隆二。

完全に冷静さを失っている隆二は、ゆき乃先輩と山下さんがそーいう関係だってことをこの場でバラまいてしまったわけで。




「分かるけど、女の嫉妬は女にくるんだから。ゆき乃のことちゃんと守りなさいよ?」

「守るよ!俺が!最近ちょっとおかしくない?ゆき乃さん…一緒にいても、心ここにあらずで…やっぱり俺じゃダメなのかな…」

「隆二がいないと生きていけないって、言ってたわよ、ゆき乃…」

「ほんと?」

「でも、私達は、ゆき乃の一番の幸せだけを願ってるの」



私は…じゃなくて、私達は…って、あたしを含めた言い方をしてくれたえみ先輩の優しさにあたしが泣きそうになった。



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