二人目の彼1


【side えみ】



「パーティーですか?」



お昼に大輔先輩が受付に来た。

今日はゆき乃はエレガで私は受付のシフト。

大輔先輩の訪問に心がハイになりつつ要件をきくと、ポールスミスと関連のある業者を呼んで感謝祭をやるみたいで、ある意味ポールの顔スタッフは総出で借り出されるみたい。

そこにパートナーを連れて出た方がいいみたいで。



「岩ちゃんと仲良かったよね?えみちゃん。まだパートナー決まってないみたいで、もし予定が合えば出てやってくれないかな?店長の俺の顔を立てると思って…」



大輔先輩はずるい。

そんなこと言われて私が断るはずがない。

シフトだって調整しちゃう。



「大輔先輩は希帆ちゃんを?」

「うん。希帆はしっかりしてるし愛想もいいから助かる!」



……ふんっ。

全く弱点の見えない完璧な彼女の希帆ちゃん。

絶対どっかで粗が出てもいいのにあの子。



「分かりました。岩田くんのパートナーで参加します」

「ありがとう、助かる。えみちゃんみたいな綺麗な子なら俺も自慢だよ。岩ちゃんには俺から話しておくね!」



ポンッと軽く肩を叩かれた。

大輔先輩の顔を立てるわけでもないし、岩ちゃんの役に立ちたいわけでもない。

でも、断れない。

好きな人の頼みなら尚更断れない。

希帆ちゃんと顔を合わせることを思うと一気に気分が落ちた。




コンコン。

もうお店も閉まったここ、美容室T&T。

比較的暇な今の時期は、お店も時間通りに閉めるみたいで。



「おう。あれ?元気ない?」

「……ご飯行かない?」

「さしめし?」



ニヤリとえくぼを見せて笑う敬浩。

ゆき乃と直人くんみたいな仲ではないけど、敬浩とは本音で話せる数少ない友達。



「うん。2人がいい」

「了解!5分待って、店閉めるから!」

「うん」



どうしてか敬浩とさしめしの時はMOAIは使わない。

いつも違うお店に連れて行ってくれる敬浩。

今日もシェアハウスとは反対側の駅に降り立った。




「眞木さんと何かあった?」


ビールで乾杯した後、敬浩がそんな質問。

何を言ったわけでもないのに私の顔色一つで気持ちを読むのは昔から。

だからか、敬浩に嘘は通用しないって私も素直になれてるのかもしれない。



「感謝祭、岩ちゃんのパートナーで参加して欲しいって…」

「なるほどな」

「仲良かったよね?って」



どこかで私と岩ちゃんがそーいう仲だって聞いたんだろうか。

それとも単に一緒にいる所を見られていたのか。



「いつもMOAIでつるんでるからじゃないの!」

「うん。そうね」

「嫌なら岩ちゃん切れよ?」



簡単に言うよねー。

無言で目を逸らした私に、思わぬものが見えた。



「冗談でしょ」

「え?」



敬浩の影に隠れてあっちから見えないように身を隠した。

急に私がくっついたもんだからキョトンとしたままの顔で首を傾げる敬浩。

そこにいたのは、清楚なイメージから一変してまるでギャルメイクで派手に着飾った……「希帆ちゃん…」大輔先輩の彼女とうりふたつ。



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