シェアハウス1


都内にある超大型デパートLDH。
タワーマンションも経営している高級ショッピングモール。

そこに来た人を幸せにできるなんてキャッチフレーズの元、あたし達社員は日々お客様への奉仕に努める。

社内寮完備のくせに社内恋愛は禁止でもなく、むしろ社内結婚は我社の誇り!なんてうたっているからか、結婚したい男女が集まっているといっても過言ではなかった。

去年入社したあたしは一年間別のデパートで武者修行の果て、いよいよLDHの靴屋に配属された。

期待と不安を胸に、今日も笑顔で出勤…




……―――――――1年後。



「ねぇ美月!ルームシェアの先輩たちって大丈夫だった?」

「へ?なんで?」

「なんでって、あんたよくあの部屋に行ったよねぇ…」



なかば呆れた顔であたしを見るけど、そんな顔される筋合いないっつーの。



「だって、シェアの先輩二人共インフォ兼エレガだよ!もうLDHの憧れじゃん、あのセクションって。なりたい!って言葉だけじゃ配属できる場所じゃないし。雲の上の存在っていうか、いつかあたしもインフォ兼エレガを名乗りたいよなぁーって!」



二年目でLDHの靴屋に配属されたあたしは、社員寮に入っていたけれど何となく独りは寂しくて会社で経営しているシェアハウスの空きを探していたら偶然見つけたんだ、この部屋を。


【明るくて家事が好きな(得意)子募集中!】


別にこれといってなんてことないこの言葉だったんだけど、そこに住んでいるのが憧れのインフォ兼エレガの先輩達だと分かった途端、もうここしかない!って思ったんだ。

女として憧れるそこで毎日働いてる先輩達と一緒に住めるなんてこれ以上のもんはないって思う。

だからあたしは早速デパート内にあるFrancfrancで家具を買い揃えた。

一度先輩たちのハウスに顔出しに挨拶に行って、その時に家具を買いたい!って言ったら「Francfrancの山下くんセンスいいよ!」って教えて貰って。

今日はその家具が来るから嬉しくって…。



「今日あたしめっちゃ忙しいからごめん、先行くね!」



社内寮から移動するあたしをちょっとだけ心配そうな顔で見送る同期に笑顔で手を振ってあたしは引っ越しの為、シェアハウスに向かった。



[ - 2 - ]
prev / next
[▲TOP