いつかこの傷が優しさに変わるまで1


大安吉日、小春日和の本日、えみ先輩と眞木さんの結婚式本番が迎えられた。

既に感動の式は執り行われていていよいよブーケトスのセレモニーが近づいてくる。

司会のお姉さんが女性陣を前に出す。

はりきって最前列にいるゆき乃先輩は、先日片岡さんにプロポーズをされて晴れて幸せが約束されたっていうのに。


「ブーケなんてとらなくても俺が幸せにしてやるって言ってんのに…」


片岡さんの隣でトサカがそう言うけど、花嫁のブーケには幸せが含まれていてやっぱり特別なものにしたいわけで。


「えみー!ここだから、こーこ!」


ゆき乃先輩の声に眞木さんと笑ってえみ先輩が「いくよー!」ってブーケを投げた。

ふわりと大きく円を描いてストンって…―――――


「え、俺ぇっ!?」


困ったように岩田が苦笑いを零す。

胸に飛び込んできたえみ先輩の想いが岩田を幸せにしたいって、そう見えて。ブーケを取れなかったけど全然嬉しい。

周りはみんな爆笑で。


「…やっぱ待って、はい、やる!」


渡したのは眞木さんの元カノ希帆ちゃん。

それはたまたま岩田の隣に居たからかもしれない。

そもそも全ての人に幸せをって、まさか希帆ちゃんまで呼ぶとは思わなかったけど、来るとも思わなかった。

だけどここに来たのは確かに意味があって。


「いらないわよ、あんたのなんて」

「ご利益あんだから縋っとけよブス!」

「は?ブス?私に言ってんの?」

「そうお前!性格ブス!」


なんかこの2人、数年後が楽しみなんだけど。

だってほら、憎まれ口叩いていても楽しそう。

えみ先輩だって眞木さんだって微笑ましく見ている。

この2人の存在があって、今のえみ先輩と眞木さんの幸せに繋がってるんだって、そーいうことだよね。


「あー欲しかったぁえみのブーケ」


ゆき乃先輩があたしの首に巻きついて項垂れている。

金木犀の香りがするゆき乃先輩は特別に片岡さんがデザインしたっていうワンピースを着ていた。

基本はメンズだけど、ゆき乃先輩に着させたいのかここ最近はレディースの服も作っている片岡さんが可愛い。

この2人はいつまでたっても変わらずラブラブしていて欲しい…。



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