今夜も、眠れない夜になりそう。
「こっち来て。もう寝なきゃえみさんも。明日シフトでしょ?」
「うん…」
そうなんだけど、なんだか眠れそうもない。
身体は物凄く疲れているのに、気を張っているせいか眠気は一向にこない。
もしもゆき乃であり美月ちゃんがここに戻ってきたら、少しでも話し相手になれるかもで。
そんな私の気持ちを察してか、岩ちゃんは腕を掴んでちょっと強引に部屋へと連れていくんだ。
「もっと信じなよ、同期。直人さんも敬浩さんも大丈夫だって。俺は悪いけどあの二人よりも目の前にいるえみが心配。この俺をこんな気持ちにするのって、えみさんだけだっつーの!」
岩ちゃんの言葉一つ一つが心に染みる。
大輔先輩を諦めなきゃって気持ちの反面、岩ちゃんとの未来を見始めている私。
岩ちゃんの前でだけ素直になれることを、そろそろ本気で考えなきゃって。
美月ちゃんに偉そうに言ったけど、私も前に進まなきゃ。
「岩ちゃん、ありがとう」
「もっと他の言葉ちょうだいよ」
「へ?」
「岩ちゃんかっこいい!とか、岩ちゃん愛してる!とか…岩ちゃん結婚しよう!とか!」
部屋に連れていってニッコリ微笑む岩ちゃん。
スーツの上着を脱いで片手でネクタイを緩めるその姿は単純にかっこいい。
初めて岩ちゃんを見た時、綺麗すぎて見とれたのが懐かしい。
「結婚してくれるの?私なんかと…」
ポツリ呟いた。
ベッドに座って私の手をキュッと握る岩ちゃんの髪を撫でる。
「しようよ、結婚。俺が幸せにしてあげる…っていうか、俺を幸せにして?えみさんだって幸せになる権利はあるんだからね。辛い気持ちは全部俺にぶつけていい。全部俺の愛に変えて返してあげるから…」
泣いてもいいよ…
岩ちゃんの気持ち全部でそう言ってくれているように思えて。
私がしっかりしなきゃ!って思いが解き放たれる。
ポロリと零れた涙を見て優しく微笑んだんだ。
「やっと素直に泣いた。いくらでも泣けばいい。俺が全部守ってやる」
岩ちゃんにしがみついて声を殺して泣いた。
いつかこの恋を笑って話せるようになればいい…そう願って―――――。
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