恋は、苦しい3


【side 美月】




えみ先輩が朝一で岩田と一緒にパーティーに出て行った。

ゆき乃先輩も仕事用のフルメイクとは違う、もっと可愛らしいメイクでルンルンで出て行った。

今日はお休みシフトで、一日自由なあたし。

テツの為に手料理振舞っちゃうもんね。

ってことで、掃除を終えるとスーパーに買い物に行った。




「あれ?店長さん?」




同じように籠を持って食材を物色しているMOAIの店長がそこにいた。

あたしの声に振り返って「ああ、えーっと確か、美月ちゃん!」すごい、名前覚えくれてるなんて。

テンションあがって店長さんのところに駆け寄った。





「こんにちは。買い出しですか?」

「んーそう。今夜ちょっとパーリーがあってねぇ」




パーリー?

パーリー?




「そうなんですね。ご苦労様です!」

「今日はお休み?」

「はい!」

「そっか。何作んの?」

「え?ああ、ロコモコにしようかなぁって」




ニヤつくあたしに店長さんが続く。





「へぇ、哲也の好物と一緒だな。美月ちゃんも好きなんだ!?」




ドキンと胸が音を立てる。

哲也って、テツ、だよね?

そんなことまで知ってる仲なの?





「ああ、哲也ってバイヤーの土田。分かる?」

「はい。あたしそこの靴屋なんで土田さんはよく知ってます」

「あーそうだったか。俺達学生の頃からの付き合いなの。黒沢もね!」




テツの過去を知る人、まだいたんだ。




「そうだったんですか。全く知りませんでした」

「まぁ店じゃそんな喋ってる暇ないし。そういやアイツ今日帰ってくるんだって。そのロコモコ、もしかして哲也と?」




サラリとそう言われたんだ。

まさか知ってるの?この人。

テツ、話してるの?

黒沢さんには言ってないみたいだったけど、店長さんには言ってるの?




「いえまさか。そんなわけないです…」

「冗談だって!分かってる。哲也んとこ仲良いし。カミさんも俺らみんな知ってるから!イタリアの買付けも一緒に行ってるみたいだしね。んじゃ俺そろそろ行くわ。また来てな!」




スマートに手を上げて、爽やかさ全開で店長さんはあたしの前からいなくなった。

ゆき乃先輩は、知ってたのかもしれない。

だからあんな風に言ってくれたんだ。




「いい女は家で待ってるのよ?美月」




胸が苦しいよ、テツ。



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