先輩達の過去2


ゆき乃先輩と片岡さんの関係を知った所でまたMOAIのドアが開いた。




「……うそ、誰よ」



そこにいたのはゆき乃先輩の本命バイヤー黒沢さんと、全く知らない女。

仲良さげに入ってきた。



「あ、直人くん!」

「どーも」



片岡さんに気づいて声をかけられる。

あたしを見てペコッと頭を下げる黒沢さんに、ペコッと下げ返した。

隣の女誰よ?

ゆき乃先輩のが100倍可愛いんだからっ!

戦闘態勢なあたしをトサカの手が遮った。



「顔に出しすぎ!睨むなよ、美月。落ち着けよ」



グイって再びトサカの腕の中。



「離せ」

「落ち着いたらな。つーか今直人さんの協力するって言ったばっかじゃん。アイツに女がいる方が都合よくない?」



トサカに言われて納得。

だけどゆき乃先輩が無駄に傷つく姿は見たくない。

現時点で片岡さんに軍配は確実にあがらない。



「トサカも協力して?」



下から見つめあげるとあたしの腰に腕を回して頭に顎を乗せる。



「んーどーしよっかな…」

「勿体ぶるな!協力してよ!」

「まぁ、いーけど。隆二ちょっと可哀想…」

「大丈夫!今市隆二くんはモテルから!」

「はは、それはまぁそうだけど!」

「ゆき乃先輩とえみ先輩には絶対何が何でも幸せなってほしい!」

「随分懐いてんのな、美月」



トサカがクスリと笑ってようやくあたしを離した。

もうとっくに落ち着いてるもんっ。



「だって、先輩はあたしのこと認めてくれたから…」

「ふうん。まぁ美月がそう言うなら、俺も協力しますよ、直人さん!」



今更ながらトサカが片岡さんにそんな声をかけると、ほんの少し眉毛を下げた片岡さんが「ありがとう」って笑った。



「か、かっこいいです!片岡さんいつも笑っててくださいよ!ゆき乃先輩の前でも…」

「……まぁ、努力する」

「はいっ!」



片岡さんとトサカとハイタッチしたあたしは、その日遅くまでMOAIで飲んだんだ。



だから翌朝酷い頭痛で目が覚めた時に、すっかり忘れてしまっていたなんて。

トサカと何があったのか、なんて……。



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