「よし、哲也くん呼んじゃえ!」
突然ゆき乃先輩がそう言ってスマホを手にした。
そういやさっきLINEして!って言ってたけど…
「知ってるんですか?テツの連絡先とかLINEとか…」
「だって良平くんと繋がってるから!聞いたらすぐに教えてくれたよー哲也くん!」
…いいの、わかってる。
ゆき乃先輩は可愛い。
女のあたしから見ても憧れるし、男ならゆき乃先輩を嫌いな人なんていないと思う。
だから普通。
テツは普通の神経。
そもそも結婚してるし、いやいやそこ笑えない。
「妬いてるの?美月ちゃん。可愛いわね」
アボカドを手掴みで口に入れるえみ先輩、エロい!
「ち、違います。そんなんじゃないです…」
否定したものの、えみ先輩は優しく微笑むだけで。
ヤキモチなんて女々しいことしたくない。
それこそルール違反なんじゃないかって。
あたしにはヤキモチ妬く筋合いも何もないって。
「嬉しいと思うわよ、その程度の可愛いヤキモチって。美月ちゃんの前でどんな哲也くんなのか、私も興味ある!」
ヤキモチ妬いてもいいんだって。
えみ先輩はそれをあたしに伝えてくれたんだって、分かった。
それがすごく嬉しい。
我慢とか制限とか、自分でストップかけていたことを、受け止めてくれる先輩に出逢えて本当に感謝したい。
「来るって哲也くん!ちょうどMOAIで飲んでるみたいだからすぐ来るわよ!」
ゆき乃先輩の言葉に目ん玉飛び出そうになった。
「今夜逢える?って聞かれてたもんねぇ美月!わたし達邪魔しちゃったから、思う存分愛し合ったらいいよ!ここなら誰にも邪魔されないから、いつでも呼んでいいからね」
まさかテツと過ごせるなんて。
ガールズトークですっかりテツとの密会も抜けてたけど。
「…いいんですか?ここに連れてきても?」
「ホテル代節約!わたしもえみも美月の味方って言ったでしょ!」
「そうよー美月ちゃん。こんな安全な場所ないわよ、ね?」
「しぇんぱぁい…」
涙脆いのはお酒のせい。
今日は楽しくていっぱい飲んじゃったから泣き上戸になってるんだって。
「また泣かせちゃった」
そう言って微笑み合うゆき乃先輩とえみ先輩が今日1日ですごくすごく大好きになった。
テツの結婚を知ってから、ずっとそれが心にあって。
罪悪感と嫉妬心に押し殺されそうな気持ちがたくさんで。
本当に心の中がボロボロで、でも大好きで諦められなくて離れたくなくて。
ズルズル今まできちゃっていたけど。
今日心から思う。
――――――――あたしは、幸せだと。
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