「あー美月ってば、わたし達が”別れなさい”とでも言うと思ってんじゃない?」
「そうねぇ〜。そうかもねぇ〜」
「確かに不倫っていえば聞こえは悪いし、世間じゃ通用しないと思う。だからわたし達も応援はしてないよ。けど、味方だから。協力もするよ。何かあったらいつでも相談しなさい、美月よりもわたし達の方が長く生きてるだけあると思うし…」
「今まで誰にも言えずに苦しかったんでしょう?独りで抱えられる恋なんて本気じゃないのよ。私達が傍にいるから、その気持ち大事にして頑張りなさい」
ゆき乃先輩とえみ先輩の優しさに涙が止まらない。
どうしてこんなにも気持ちを理解してくれるんだろう。
あたしのテツを好きだという気持ちを第一に考えてくれる人がこんなに傍にいてくれるなんて思わなかった。
どうしたらいいのか分からなくて、でも誰にも相談できずにいたあたしのことを分かってくれて、それでも味方だと言ってくれる二人に出逢えてよかったと思わずにいられない。
本当は面倒だと思うようなことでも、この二人は親身になって一緒に考えてくれる人なんだって思うと、ただただ嬉しくて、子供みたいにビービー泣いてしまった。
「それでそれで、哲也くんってさぁ、アレ何センチあるの?デカイ?太い?それとも…―――しょぼいの?」
わざとなのか、ウインナーとポークビッツを左右の手で持っているゆき乃先輩。
右手のウインナーと左手のポークビッツを交互にあたしに差し出していて。
隣でえみ先輩はクスクス笑っている。
「写メ撮ってきたら?美月ちゃん」
あげく、とんでもないことを言われ…
「無理無理無理ですよっ!そんな見せ物じゃないですし…」
「げ、そこ独り占めかよ?」
ゆき乃先輩の目つきが死んだような冷めた目に変わった気がした。
「定規で図れるからサイズ図ってみなよ、今度!ちなみに岩ちゃんは15センチ」
…いらないっすその情報…オエエエ〜。
えみ先輩にはごめんなさいだけど、あたし岩田の下半身事情には1ミリも興味がないっすよ。
そう思いながらも「図れそうもないです…」無難に答えると「りゅーじも15センチだよ!」ニッコリ笑顔でゆき乃先輩が言った。
…それも、知りたくないっす。
「でもさぁ、美月ちゃん臣ともすっごく仲良いよね?今朝だって一緒にソファーで寝てたし」
「え、えみ先輩それは誤解です!ていうか何で知ってるんですかっ!?」
「私見たから。水分補給しにきたら、ソファーで臣に抱きしめられて眠る美月ちゃんを。まぁやましいことはないって分かってるわよ。でもね美月ちゃん。男なんていつどこで覚醒するか分からない生き物だから、美月ちゃんがそうじゃなくても臣が覚醒しちゃったら結構強引に抱かれちゃうんじゃない?」
「…覚醒?」
「…あ」
「え?なに?ゆき乃」
覚醒に反応したのか、ゆき乃先輩がちょっと苦い顔をする。
アーモンドチョコをパクついた後、眉毛を下げて言ったんだ。
「片岡に壁ドンされた…」
「えっ!?」
思わず大声出しちゃったあたしに対してえみ先輩は涼しい顔して聞いている。
「はは、直人くん覚醒しちゃったんだ」
なんて余裕の表情で。
ゆき乃先輩はやっぱり苦い顔で、でもちょっと懇話しているようにも思えた。
「片岡の所担当じゃん良平くん。だから前からしつこく言っといたの、良平くんがきたらわたしに知らせろ!って。だからお礼にキスでもしてあげようって、ちょっとからかったのよ。でもそしたらアイツ…真剣な顔で迫りやがった…でも寸止め。何もされなかった…」
「あら残念そう」
クスッてやっぱり余裕のえみ先輩かっこいい!
そんなえみ先輩に対して「まさか!」って否定するゆき乃先輩も可愛いけど。
「そんなことより、良平くんわたしが遊びで男と付き合ってるって噂、鵜呑みにしてて…なんかちょっと悲しかったなぁー」
グダーってアタリメをかじりながら膝を抱えてソファーにコロンとするゆき乃先輩。
部屋着ホットパンツから伸びた綺麗な足の爪にはこれまた可愛いネイルがされている。
女子力高いゆき乃先輩はどっから見ても可愛い。
曇った顔もやっぱり可愛い。
「なにそれ?良平くんがそう言ったの?」
不機嫌にシャンパンを一気飲みしたえみ先輩はオレンジジュースとワインを割ってサングリアに手をつけた。
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