マーキング1


引越祝いの翌日。

朝起きたここシェアハウスのリビングは物凄い酒の匂いが充満していた…。



「山下さん!大丈夫ですかっ!?今日シフトは?」



肩をユサユサ揺すると「フガッ」って鼻を鳴らして重たそうな目を開けた。

トサカと流れ星を見たあたしは、その少し後急激に眠くなってまさかのリビングソファーの上で寝ちゃったなんて。

目が覚めた時、生ったるい温もりにソファーから転がり落ちてお尻に青タンを作ったのは誰にも秘密。

なんでかトサカに抱きしめられて寝ていたなんて絶対にテツには言えない。

昨日ちょっとしか逢えなかったらから今夜はテツに逢いたいって思うけど…



ボーっとしている山下さんを置きっぱなしにしたままシャワールームに入ってシャワーを浴びていたんだ。

身体にこびいついたトサカの温もりなんて全部きれいさっぱり消してやるんだから。



「美月ちゃ〜ん?入っていいー?」

「はいっ!…―――ええええっ!?」



聞こえた声はえみ先輩で。

洗面所の曇りガラスドアの向こうで服を脱いでるのがボヤっと見えた。

え、え、え、え、えみ先輩!!!

あたし見せられるもん持ってないっす!

なんて言えるわけもなく。

ガチャっとドアが開いた瞬間、えみ先輩が入ってきた。



「おはよ、昨日ごめんね?」

「めっそうもないです!」



何故か左右にシャワーが一つづつついてるこのシャワールーム。

芸能人の住むまるでドラマで使われそうなセレブリティーなこのシェアハウス。

裸の付き合いってよく言うけど、恥ずかしいったりゃありゃしない。

えみ先輩はなんら気にしてないって感じで、綺麗にシャワーを浴びている。

だけど、チラッと見えたそこ……



「はっ……」



見ちゃった!

見ちゃった!!

えみ先輩の胸元に紅い跡…まさか岩田?

ジロジロ見てたわけじゃないけど、視線が止まっていたのか。



「ん?」

「へ?」

「え、興味ある?」

「へ?え?」

「冗談よ。美月ちゃんがあんまり私の身体見てるから」

「わ!すいません!いやあの、キスマついてるから岩田かな?とか勝手に考えてました!」



何故か敬礼のポーズを取ると、そんなあたしにぷって笑うえみ先輩。



「あーこれね。大丈夫だよ、スカーフで隠れるから!」



ニッコリ微笑む余裕たっぷりなえみ先輩。

あたしより後に入ってきたのに、爽やかな笑顔で出て行った。



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