【side 美月】
「あ、ゆき乃先輩手紙きてました!」
ポストに入ってた郵便物を仕分けしてゆき乃先輩に渡した。
ありがとう!って封筒を手にしたゆき乃先輩は「げ、最悪…」ボソリと呟いて。
顔をあげたあたしは手中にある封筒に自然と目がいく。
そこにあったのは、結婚式の招待状で。
「……なんでわたし結婚できないのよ」
ドキッとするような発言に思わずゴクリと息を飲んだ。
「送らないよね、普通、元カノに招待状…。絶対嫌味で送ったよ、こいつ!」
ゆき乃先輩はその招待状を開きもせずにゴミ箱にスコンと投げた。
「俺が結婚してあげるよ!」
「俺が結婚したるっ!!」
今市隆二くんと山下さんの声が被ってキョトンとしているゆき乃先輩。
「……ありがとう!」
でも、爽やかにそう返したゆき乃先輩の顔は全くと言っていいほど嬉しそうに見えなくて。
黒沢さんが言ったら喜ぶんだろうか?
女にとって最大の幸せは結婚?
少なからず1人になることのないゆき乃先輩だけど、あの顔を見ていると心はとてもじゃないけど満たされてなんかいないように思えた。
不倫しているあたしが思うことじゃないのかもしれないけど。
でもやっぱり先輩達は幸せであってほしい。
「おいブスッ!これ手伝えよ!」
トサカに腕を引っ張られてキッチンへ移動。
大皿にお菓子を仕分けしているトサカの手付きは慣れたもんで。
あたしいなくてもよくない?
岩田がお菓子ばっか買ってきたからのせてあげてるのに、誰がこんなに食べるのよ。
「トサカー」
「あ?」
「ブスッて言うな!」
パシッて腹筋を軽く殴るとクククって笑う。
ポスっとトサカの手があたしの髪に落ちて、そのまま数回撫でられる。
……分かってる、そんなこと思ってるわけじゃないって。
それがトサカなりの優しさなんだって。
「トサカはかっこいいね、みんながキャーキャー言ってるのがちょっとだけ分かったかも…」
あたしがそう言ってニッコリ微笑むと、照れくさそうに目を逸らされて。
「ちょっとかよ!」
照れてる?
いや、照れてるよね?
なんかこいつ可愛いとこあんじゃん!
「ばーか、これ持ってけ!」
大皿を差し出されて慌ててそれを抱えた。
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