星降る夜1


【side えみ】




部屋に入るなり岩ちゃんが私を壁に押し当てるように追い込んでキスをしてくる。

MOAIで大輔先輩と彼女の希帆ちゃんに会うとは思ってなかった。

全くもって気分は優れなくて…

私がそんなだからなのか、岩ちゃんの様子も少しおかしく思えた。



「腕あげてっ…」



キスの途中のほんの隙間でそう呟いた岩ちゃんは私のTシャツを軽々と脱がせた。

そのまま二人で倒れ込むようにベッドに流れて…

私を組み伏せて胸元に顔を埋めて舌を這わせる岩ちゃんの頭をキュっと抱きしめた。

何も考えたくない…―――



「えみ…」



そう言ってチュって首筋に吸いついた。

珍しいな、マーキングなんて。

学生の頃は首筋にキスマークをつけることすら恥ずかしかったけど、歳を重ねるうちにそんな恥じらいはどこかに置いてきてしまった。

岩ちゃんとのこの関係だってそう。

一般的には認められない、身体だけの関係。

そうはいっても私は岩ちゃんの存在にいつだって癒されている。

このまま岩ちゃんと一生を共にしてもいいとすら思っている。

でも始まりが心じゃなくて身体だった私達は、そう思っていても口には出せないんだよ。

例えば、岩ちゃんも私と一生を共にしてもいいと思っていたとしても。

抱かれれば抱かれるほど、後からくる罪悪感に本当は押し潰されそうで。

こんな関係ダメだって分かっているけど、一人で眠るのは寂しくて死にそう…。

希帆ちゃんみたいな幸せな笑顔、どこに置いてきたの、私…。



「どうしたの…?」



気づくと岩ちゃんの行為が中断していて。

心配そうに私を見下ろしている。

荒げた呼吸も元通りに戻っていて…

そんな子犬みたいな目、ズルイな。



「ん?」

「えみ、泣きそうだよ?」

「…え?まさか…」

「泣いてないけど…泣きそう…。ね、俺のこともっと頼ってよ?」



私を見下ろす岩ちゃんだって瞳が潤んでるじゃない。

なんで私なんかの為にそんな切ない顔すんのよ…



「頼ってるよ、十分…」

「どこが?全然頼ってないじゃん?アイツに会っただけでなんでそんな暗いの?何で動揺隠してんの?女連れてきて幸せそうな姿見て、辛いなら辛いって言ってよ?俺、何のためにえみの傍にいるのか分かんねぇじゃん!…―――好きだよ、えみ。俺をもっと愛して…」



激しいキスが急に優しくなった。

あっちで美月ちゃんの歓迎会だって分かってる。

私達がこの部屋で何をしているのかだって、バレてる。

でも離れたくない。

こうしてずっと岩ちゃんと抱きあっていたい。



「私も、好きよ…岩…―――剛典くん…」



嘘と真実の挟間で壊れそう。

助けてほしい…―――





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