セフレの実態1


「生がいい、生!焼酎買って割って飲みたい、わたし!りゅーじグレープ絞って?」

「もうエロイんだから、ゆき乃さん!生ね、生…」



…すいませんけど、セフレってこんなイチャイチャするもんっすか?

セフレがいたことないからさっぱり分かんねぇけど、普通に付き合ってるって言わない方がおかしい気がする。

立ち飲みバーとシェアハウスは目と鼻の先で、そこから一本逸れた道の並び沿いに24時間営業のスーパーがあった。

たいていのものはここで揃うって山下さんが教えてくれた。

スーパーについた途端ゆき乃先輩が今市隆二くんの背中からポンって飛び降りて、今度は普通に腕を組んで歩いているんだけど。



「だめだ、未知すぎてついていけない…」

「何が?」



ニュイって手が伸びてきて買い物かごの中にポンポンお菓子を放り込んでいるのは岩田。

偏食か?ってくらいお菓子ばっか。

えみ先輩はどうやら田崎さんとお酒コーナーへ行ってるらしい。



「アイスも買おうぜ、アイスも!」

「…また支払うの田崎さん?」

「大丈夫っしょ、あの人金持ってるから!それより何の話だよ、未知って…」



ジーってあたしを見つめる岩田は見る分には申し分ないけど、来るもの拒まずはやっぱり受け入れられない…。



「あんた、えみ先輩のセフレの位置でいいわけ?」

「あ?それお前に関係あんの?」




…怖いっ!!

いきなり目つき変えてギラギラ睨んでくる。

先輩の前ではすんごい甘甘な顔してるくせに!

人が心配してやったのに、なんなのよ。



「関係ないけどっ、ふんっ!」



アイスを選んでる岩田を無視してあたしはカートを動かした。



「アイスなんて入れさせねぇ…」



ド低い声で呟いたら「何、機嫌悪い?岩ちゃんと揉めた?」トサカがあたしからカートを奪った。

ふわりと煙草の匂いがするトサカは、さっきゆき乃先輩に見せた顔をあたしには見せない。



「えみ先輩とこのままでいいの?って聞いたらキレられた…」

「はは、なるほどな。まぁあーいうのって同意のもとだろうし、そこは結構シビアでふれてほしくないんじゃない?正式なカレカノだって発表できない恋なんて、俺には無理だけど…」



…それはあたしも一緒だよ。

でもあたしの恋こそ、発表できないんだ。



「そだね…」

「センチになってんなよ?らしくねえぞ」



ポカって痛くない鉄拳が飛んでくる。

トサカは普通の人より距離が近い気がする。

それがあたしだけ特別なんてことはなくって…



「そうなんだけどさ。すっごい顔で睨むんだもん、アイツ」



ムウっと口を尖らせているとトサカにムニュって唇を指で摘まれた。



「ブスっ面になってんぞ!?女なんだから笑顔でいろよ、その方が普通に可愛いし」



サラっとそういうこと言えちゃうトサカって、絶対モテルよね。

テツも、そういうことサラリと言ってくれる人だけど。

なんとなく、トサカとテツが重なるこの感じはなんなんだろうか…。



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