行方知らずな片恋6


「えみちゃん?ああやっぱり!」



通り過ぎようとしたあたし達を再度止めた、口鬚ダンディーさん。




「えみ先輩、ご無沙汰してます!!私のこと覚えてますか?」




言ったのは彼女さん。

えみ先輩、知りあいだったの!?

振り返ったえみ先輩は優しく微笑んで「こんばんは大輔先輩と…――久しぶりだね、希帆ちゃん…」胸が痛くなりそうなくらい切ない声に聞こえた。



「じつは私もLDHに入社したんです。研修で西武の方なんですけど、早速エレガをやらせていただいてまして…」

「はあっ!?」



思わず出ちゃった。

だって研修でエレガって…ないないない、あり得ない。

絶対顔で選ばれてるよ!




「あ、こんばんは、大輔の彼女の希帆です。よろしくお願いします」



ペコっとあたしにも頭を下げる希帆。

顔がめちゃくちゃ可愛いじゃないか!

でも…




「えみ先輩とは大輔も同じで高校からの後輩なんです。再会できてめっちゃ嬉しいです」

「…うん、元気そうでよかった」

「また仲良くしてあげて?」




ポンってダイスケさん、えみ先輩の頭を叩く。

悪気はないんだろうけど、いい気分じゃないよね…。



「はい、勿論です。希帆ちゃん何でも聞いてね」

「はい、ありがとうございます!今度ご飯食べにうちに来てください!大輔と一緒に待ってますので!ね?」



クイってダイスケさんのスーツの袖を引っ張ると、目を細めて「待ってるね」笑うんだ。

罪なき微笑み…。

ずっと付き合っているのかな?

そんな雰囲気だった。

何だか自分を棚に上げて切なくなる。

先輩たちは先輩たちで、すごくあたしの中で理想なのに、まだ幸せを掴んでいないんだって現実がちょっとだけ悲しい。

でもそれが恋なんだって。

恋愛に、うまいへたなんてない。

どんな人でも好きになる権利はある。

それが実か実らないかは、自分次第なんだって。


えみ先輩、頑張って!!


心の中で小さなエールを送ったんだ。



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