「えみちゃん?ああやっぱり!」
通り過ぎようとしたあたし達を再度止めた、口鬚ダンディーさん。
「えみ先輩、ご無沙汰してます!!私のこと覚えてますか?」
言ったのは彼女さん。
えみ先輩、知りあいだったの!?
振り返ったえみ先輩は優しく微笑んで「こんばんは大輔先輩と…――久しぶりだね、希帆ちゃん…」胸が痛くなりそうなくらい切ない声に聞こえた。
「じつは私もLDHに入社したんです。研修で西武の方なんですけど、早速エレガをやらせていただいてまして…」
「はあっ!?」
思わず出ちゃった。
だって研修でエレガって…ないないない、あり得ない。
絶対顔で選ばれてるよ!
「あ、こんばんは、大輔の彼女の希帆です。よろしくお願いします」
ペコっとあたしにも頭を下げる希帆。
顔がめちゃくちゃ可愛いじゃないか!
でも…
「えみ先輩とは大輔も同じで高校からの後輩なんです。再会できてめっちゃ嬉しいです」
「…うん、元気そうでよかった」
「また仲良くしてあげて?」
ポンってダイスケさん、えみ先輩の頭を叩く。
悪気はないんだろうけど、いい気分じゃないよね…。
「はい、勿論です。希帆ちゃん何でも聞いてね」
「はい、ありがとうございます!今度ご飯食べにうちに来てください!大輔と一緒に待ってますので!ね?」
クイってダイスケさんのスーツの袖を引っ張ると、目を細めて「待ってるね」笑うんだ。
罪なき微笑み…。
ずっと付き合っているのかな?
そんな雰囲気だった。
何だか自分を棚に上げて切なくなる。
先輩たちは先輩たちで、すごくあたしの中で理想なのに、まだ幸せを掴んでいないんだって現実がちょっとだけ悲しい。
でもそれが恋なんだって。
恋愛に、うまいへたなんてない。
どんな人でも好きになる権利はある。
それが実か実らないかは、自分次第なんだって。
えみ先輩、頑張って!!
心の中で小さなエールを送ったんだ。
[ - 24 - ]