いつかこの傷が優しさに変わるまで3


「えみ先輩すっごく綺麗です!本当におめでとうございます!」

「ありがとう美月ちゃん!美月ちゃんも可愛いよ」

「ね、ブーケ、わざと?」


ゆき乃先輩がえみ先輩が今持っているブーケを触りながらそんな言葉。


「わざとってわけじゃないけど、岩ちゃんの笑顔が見れて嬉しい」

「希帆ちゃんと仲良いみたいじゃん、最近岩ちゃん…」

「そこは正直複雑だけど。でも岩ちゃんが繋いでくれた幸せだから、私は大輔さんと幸せになりたいし、希帆ちゃんが繋いでくれた大輔さんのこと、大事にしていきたい…」

「りゅーじと健ちゃんも早く他の女見つけないかなぁ?」

「あの二人は当分無理そうだね」


クスクス笑う先輩2人にあたしも微笑む。

だけどすぐに視線が飛んできて―――


「「美月は?哲也くん忘れた?」」

「はい。もうあたしの中、トサカだけです…。先輩、本当にありがとうございます」

「美月が笑えて嬉しいね」

「うん。ほんと、よかった、美月ちゃん」


普段何気なく使う「ありがとう」って言葉だけど、こうして改まって言う機会もじつは少ないんじゃないかって。

だけど本来「ありがとう」って言葉はいつだって大事な言葉で、あたしはこれからもその感謝の気持ちを大切な人達に心を込めて伝えていきたい…

そんなこと思ってる自分がこっ恥ずかしいけど、先輩達は誰もこの言葉に恥じらいなんて見せたりしない人だ。


「ねぇえみ先輩、眞木さん優しい?」

「ふふふ、すっごく優しいよ大輔さん」

「よかった。ゆき乃先輩!片岡さん、優しい?」

「超絶優しいよ」


笑顔で答えた先輩にあたしはもう涙腺が崩壊しちゃってて。


「しぇんぱい…嬉しい…」


出会った頃のあたしはまだまだ未熟で世間知らずで、誰かを幸せにしようだなんてカケラも思っていなかったと思う。

だけど、恋は苦しくて…

自分の幸せだけじゃ成り立たないものが多くて、みんな必死だった。

人生、大事なのは恋だけじゃなくて、大事な人を守るために強く生きていくことを少なからず学んだ。

あの日、土田さんと出会って恋をして、苦しみも経験したけど、それは全部がトサカに繋がっているんだって。

だから土田さんを好きになったことも、今ではあたしの中でいい思い出に変わっている。

あんなに傷ついた過去も、いつかは優しさに変わるんだって今ならわかる。

もしも今、酷く傷つき悲しんでいる人がいたら教えてあげたい。

勇気を持って手を差し伸べた先、その手を握り返してくれた人の言葉をちゃんと聞いてほしいと。

そして苦しんでいる人がいたら、一緒に悩み苦しんであげてほしいと。

今が苦しい傷は、いつかきっと優しさに変わると信じて、幸せへ続く一歩を大きく踏み出していこう、と…。

あたしができたんだからきっとみんなできるはずだよね。



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