恋と呼ばない関係3


時計の針はお昼を過ぎた所だった。

朝が早かったせいか、まだ思った以上に時間はたっぷりある。

女の独り暮らしの引越しはこんなに簡単に終わるもん?



「色気のねぇ下着だなー」



聞こえた声に振り返ると岩田がダンボールに顔を突っ込んでいて。

中に入っているあたしの下着を物色している。

ありえない。



「ちょっと、何すんだ!?この変態っ!」

「え、俺変態?ねぇえみさぁん、俺って変態?」



ブラを指で摘みあげながら視線だけ後ろに向けて甘えた声。

そこには涼しい顔したえみ先輩がいて、岩田の首に後ろからフワッと抱きついた。



「うーん。時々変態?でも嫌いじゃないよ私はそんな岩ちゃんも!」

「だよねっ?んじゃ俺変態でもいーや。えみさん今日も可愛い!チューして?」



おいっ!!

おいおいおいっ!!

僭越ながらえみ先輩っ!!!

ここあたしの部屋っ!!

そんでもって岩田!!

何してんだよっ!!!



「だめだめ。私人前でしないタイプだから。ゆき乃と違って!」

「ちぇー。んじゃ後でいいや」

「……はのぉ…」



あたしの消えそうな声に二人同時にこっちを見た。

さも、邪魔そうな顔で。



「ずびばぜん…お2人は付き合ってらっしゃるんですか?」

「まさか!遊んでるだけ。ね?」

「そうそう。俺来る物拒まずよ!」



何その笑顔。

岩田の目笑ってないし。

遊び!?

遊びなの!?

そこに愛はないのっ!?



「なぁにー美月ちゃん!これぐらいみんなやってるから」



えみ先輩、涼しい顔して結構ショックっす。

一人壁ドンでゴツっと頭をぶつけるあたしに、救世主田崎さん。



「はいはい、離れてねー。美月ちゃん本気にしないでねーこいつら。いつもこうなの。寂しいと眠れないって真夜中に呼び出される身にもなれってなぁ?」

「……しぇんぱい、自分分かんないっす」



救世主の言ってることも分かんねぇし、一体どんな関係なんだよ。

見つめるえみ先輩は別にどうってことないって顔。

美人だから全然遊ばれてもいいけど、いないのかな、彼氏。



「え、えみ先輩付き合ってる人いますよね?」



だからつい聞いたんだ。

だって絶対いるはずって。

えみ先輩に似合う素敵な人が。

あたしを見てニッコリ微笑むえみ先輩は「美月、続きは今夜って言ったよね?」……ごめんなさいっ!

えみ先輩目が笑ってない。

この人敵に回しちゃダメだ絶対!!

背筋がピンとしてあたしは裏返った声で「はいいいいっ!」って叫んだんだ。



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