「岩ちゃんに全部聞いたよ」
えみの休憩時間に合わせてデパートにやってきた。
休みの日になんて絶対来たくないって思ってたけど、友達が大変な時にそんなこと言ってらんない。
わたしの顔を見るなり泣いちゃったえみ。
一人で頑張らせてしまったことを後悔する。
それなのに「ゆき乃は大丈夫?」ってまた先にわたしの心配しちゃうお人好しなんだから。
「わたしのことは、もう少し待って。自分でも整理つかなくて…。ちゃんと話すから、少し待ってて?」
「うん。でも直人くんにはちゃんと話せてる?」
「…うん。直人がいなきゃ死んでただろうけど…」
本当にそう思う。
良平くんに受け入れて貰えなかった屈辱は、この先生きていても意味がない…なんて思ったりもして。
女としてわたしに魅力がないのか、原因は不明だけど、悲しいとか辛いとかじゃ言い表せない気持ちだった。
わたしの言葉に目を見開くえみは「直人くんがいてくれてよかった…」って嬉しそう。
「直人に酷いことしちゃったけど、それでも直人はわたしを見ててくれるから…」
このまま甘えたい気もする。
今はどうにも一人でなんて眠れそうもないからしばらく直人に居座って貰わないと。
「それよりも、まずは哲也くんとさしで話す。今日哲也くん来てるか分かる?」
「来てるよ、さっき会った。ゆき乃と入れ違いで」
「マジで?ちょっと探してくる」
「うん。あ、ゆき乃…」
わたしを呼び止めたえみはちょっと困惑した表情で微かに笑う。
「ん?どうしたの?」
「ありがとう、来てくれて」
「うん。えみは大事な友達だもの!」
泣きそうな顔で微笑むえみ。
「あとそれから、今夜大輔先輩に誘われてて…」
キョトンとした顔のわたし。
え、大輔先輩!?
「誘われた?眞木さんに?」
「うん。さっきエレベーターで言われて。何かどうしても話したいことがあるって」
「うん分かった!後はわたしにまかせて。それから臣はいるかな?」
「臣?いたよ、さっき哲也くんと臣と一緒に乗り合わせて…」
「美月の看病、臣にお願いしてこようと思って。あの子ずっとトイレで吐いてて…。相当キツかったんだね、哲也くんのこと。ちょっと心配だから…」
「私キツく言っちゃったから、もう嫌われちゃったかなぁ」
寂しそうにえみが言う。
「それぐらいで嫌う美月なら、最初からシェアに選ばないって!大丈夫だから」
わたしの言葉にえみがまたちょっと泣きそうに微笑んだ。
眞木さんとどんな話があるのか?分からない不安と戦ってるえみのこと、ちゃんと見てるから。
わたしはポンッとえみの髪を撫でて立ち上がると、まずは臣を探しに美容室に足を踏み入れた。
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