大量の荷物を持ってくれたトサカと一緒にシェアハウスに戻ると単純に人が増えてた。
「あ、今市隆二くん」
「え?フルネーム?」
Tiffanyの売上No.1の今市隆二は、そのイケメンフェイスで何人の女子に売りつけてきたことだろうか。
彼が優しく手を取ってニッコリ微笑んで「よくお似合いです」なんて言おうもんなら女は誰でも買ってしまう。
「いやなんか、呼び方分かんなくて」
「隆二でいいよ普通に」
ポンポンって隆二があたしの髪を優しく撫でた。
勘違いするからー普通の女子はこーいうことされたらさ。
「すげぇ荷物だな」
トサカの持ってる袋を見て言ったのが岩田剛典。
あたし達4人同期で、今年3年目。
岩田はまさかのPaul Smith
あんな敷居の高い所になんで入れたんだろう?って思うけど、結局のところイケメンだからなんじゃないかって。
そしてこの男、唯一あたしとテツのことを知っている人。
知っているというか、知られているというか、知られちゃったというか。
「岩ちゃんちょっとー!」
「りゅーじ、きてきてー!」
……この2人、どうやら先輩達のお気に入り?
2人共風のように消えてトサカと2人きり。
「あ、じゃあ部屋までお願いします」
「あーうん」
廊下を歩いて部屋を覗くとさっきまでピンク色だった部屋がモノトーンでシンプルに飾られていた。
「すごい、さすが店長だな山下さん」
「お、お帰り!どうや?女の子やしもうちょいcolor入れたいんやけど、俺が適当に飾ってもええかな?」
白Tに黒いエプロンをしたカフェの店員みたいなスタイルの山下さんがニカッと楽しそうに笑顔を投げた。
「え、嬉しいです!何かあたしの部屋じゃないみたい…」
「これなら俺泊まりに来れるわ」
また、後頭部に顎を乗せてトサカがあたしを後ろから軽く抱きながらボソッと呟いたんた。
いや、呼ばないから。
テツだって呼べないっていうのに…
「安心して、間違っても呼ばないから!」
あたしの言葉にまた大きな舌打ちが届いた。
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