■ 友情という名の愛情1


『もうすぐバレンタインだね、奈々〜』

『あ、そうか!もうそんな時期か〜』



青倉庫のVIP部屋。

今日もここでは哲也が好きな連ドラのDVDが流れていて、それを真剣に見ている哲也はわたしの膝に頭を乗せている。

手前のソファーでは同じように奈々の膝の上に頭を乗せて雑誌で顔を隠して寝ているタカヒロ。


oneに平和な日々が戻ってきた。

今日はこれからバレンタイン暴走に向けての総長会議らしきものがあるみたいで…

何か会社みたいでちょっと可笑しい。



『哲也バレンタイン何が欲しい?手作り?ブランド?』



哲也の赤い髪を撫ぜながら聞くわたしに、視線をガッツリ絡ませてそれから一言呟いたんだ。



「ゆきみだけでいい」



次の瞬間、奈々がブっと吹き出して…



『何か想像通りの答えだったよ、哲也くん!』

「…そうかよ」

『うん、そう!でもゆきみ手作りでしょ?』

『うん、奈々一緒に作ろうよ』

『うん、もちろんだよ!』



ニコっと奈々と二人微笑みあった時だった。


トントンってVIPのドアをノックする音。



『はーい』



答えるとガチャってドアが開いて「タカヒロさん、そろそろ来るそうです」ケンチが顔を出した。

哲也を膝に乗せてるわたしを見て、ちょっと照れたように微笑むケンチは、奈々の膝の上から起き上がったタカヒロを見て、少しだけ瞳を細めた。



『直人は?』

「外にいるよ」

『じゃあわたし達もそろそろ外行こうか、奈々』



総長会議はこれまた極秘らしくて、女は基本ここから追い出される。

それが分かっているからそう言っただけだったんだけど…。



「待て」



そう言って立ち上がろうとしたわたしの腕を引くのは哲也で。

すでに立ち上がった奈々の腕もタカヒロに引っ張られている。



『タカヒロ?』

「ここにいていい。何も隠すもんねぇから。奈々とゆきみちゃんはこのままここにいろよ」



吃驚した。

でも…



『哲也がそうしろって言ったの?』



タカヒロにそう聞くと苦笑いを返すタカヒロ。

でも次の瞬間ニヤっと口端を緩めて…「ゆきみちゃんを目に入らない位置に置いておくと嫌だって、哲也がねぇ〜」からかうようなその言葉に笑ったのは奈々で。

当の哲也は知らん顔している。

そんなこと言ってねぇ…って顔だけど何の否定もしないから…



『哲也…』

「…あ?」

『ほんと?』

「…あ、お前。直人とか直人とか、クソ直人とかにはあげんじゃねぇぞ!」



まさかのさっきの話の続きが飛んできたんだ。



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