■ 許せる人1


「哲也が美幸のことを突き止めてそれをこの前俺と奈々に報告してくれた。でもそれは、俺達にだけって約束で」


そこまで言うと一旦区切るようにタカヒロは奈々の髪をすっと撫ぜた。

こんな時にだけど、その行動に愛が溢れていて、胸がキュンとした。


「それをみんなの前で話して欲しい……そう頼んだのはこいつだ、ゆきみちゃん」



誇らしげに奈々の肩に腕を回してタカヒロが言った。

ほんの一瞬その意味が分からなくて、奈々を見つめるわたしに優しく微笑んでいる奈々。



『ゆきみがワタルの為に自分を犠牲にしてること、早く止めさせたくて、毎日通っちゃった!』



語尾を上げてそう言うから。

楽しそうな声を出すから。



「負けました、奈々さんのゆきみさんを思う気持ちには……きっと…羨ましかったんです、本当は」



悲しげにそう告げた美幸。

そこにケンチがVIPから小さな男の子と――――――『恵里さん……』7代目の女を連れてきたんだ。

わたしの声に顔をあげた美幸は、恵里を見て激しく動揺した。



「恵里、コウどうして?!」



ケンチがそっと恵里の背中を押すとゆっくりとこっちに向かって歩いてくる2人。

ガクガク膝が揺れている美幸の傍にわたしと奈々が同時に駆け寄った。

でも、それより少しだけ早く美幸の所に行ったのは恵理で。



「美幸、ごめんね…」



涙声が青倉庫に響いたんだ。



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