■ 一番大事なもん1


【side ゆきみ】




この先何があってもわたしの親友は奈々で…


わたしの愛する人は――――哲也だけ。





―――――――――――――――


奈々の為…

そうやってワタルの思うように、哲也と別れて直人と付き合っているわたし。

ワタルの過去に何があったのか突き止めないと、永遠に変わらないこの関係。

毎日のようにわたしと一緒にいてくれる直人は、後輩を使って色々調べているんだろうけど…



「ああ…うん…そうか…分かった。頼むな…」



鋭い目つきでそう言ってから電話を切った直人は、その目をわたしに向ける時にはもう、優しくなっていて。

絶対の絶対にその突き刺すような視線をわたしに向けることはまずない。



『エリー達?』

「うん」

『何か分かった?』

「少しね」

『直人が動けばいいのに…』



ベッドの上でそう言うわたしに、スッと近寄ってきてフワリと抱きしめられた。



「俺がゆきみを一人にするわけねぇだろ…」



…どうしても直人は、哲也とよく似た喋り方で。

哲也と似たような髪型も…わたしの心を一々くすぐる。



『直人…』



名前を呼ぶだけで、この部屋の空気が一変する。

優しく見つめる直人の手がわたしの頬に触れて…――「好きだよ」甘い声を囁く。

目を閉じて直人の温もりを待つわたしはもう、哲也の所に戻りたいとは言えない。


この現実を、親友にも…言えないんだ。



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