■ 言の葉9
『どうしたの?』
そう聞くあたしを一瞬でベッドに埋めた。
「なんでもねぇよ」
照れ隠しなのか何なのか、タカヒロは溜息の理由を教えてはくれなかった。
でもそれはきっと、あたしにとって喜ばしい事だって思う。
キスを繰り返す唇も…
全身をなぞる手と甘い舌も…
「奈々」って呼ぶその声も…
なにもかもをが、あたしに優しい。
タカヒロから出る空気が、あたしを優しく包みこんでくれているんだ。
こんな幸せ、夢みたいで。
夢なら覚めないで…なんて願ってしまった。
でも、こんな幸せは長くは続かない―――――
クリスマスから三日後、あたし達を待っていたのは、想像を遥かに越える泥沼の世界だった。