■ 大事なもの6
『待ってよ、あたし家に帰るつもりだったからお母さんに何も言ってない』
「あぁ、おばちゃんにはもう言ってある」
『えっ? 言ったのっ?』
「まぁ、抜かりなく」
『そうなんだ』
まさかこんな泊まりがけだなんて思っていなかったし、ゆきみにあんな事があったから何となく気分が落ちたままだったあたし。
ゆきみを思うと胸が痛くて、心配で堪らない。
でも――――
あたしの為にこんな準備をしていてくれたタカヒロを、愛おしく思わずにはいられない。
ペンションの中も、クリスマスツリーが飾られていて、クリスマスケーキまでが用意されている。
まるで一瞬前まで誰かがいたかのように、部屋も暖かいし。
「後でゆきみちゃんと哲也も来るから」
続くタカヒロの言葉にあたしは吃驚して後ろにあったソファーに倒れ込んだ。
そんなあたしを「何やってんだ?」って顔で見下ろすタカヒロは、次の瞬間口端を上げて艶っぽい視線をあたしに飛ばす。
ギシッて音と共にソファーに寝転ぶあたしに覆いかぶさるタカヒロ。
続く行動が読めてあたしは苦笑い。