■ 大事なもの5
【side 奈々】
タカヒロのバイクの後ろに乗って辿り着いたのは、タカヒロの家でもあたしの家でもなくって、驚くあたしを嬉しそうに見つめるタカヒロは¨してやったり¨って顔を見せた。
『ここ、どこ?』
キョトンと見上げたあたしにタカヒロのサラサラの髪がかかって…
目の前のタカヒロの瞳がうっすら閉じられた。
足を止めたあたし達はその場で何度かキスをした。
山奥とまではいかないけれど、周りを見渡しても森なのか林なのかも分からないような場所だった。
名残惜しくあたしから離れたタカヒロは、あたしの手を引いて目的地らしきペンションみたいな小屋に入ってく。
「貸し切りだぞ」
ペンションの鍵を開けて中に入る寸前、振り返ったタカヒロの悪戯っ子みたいな瞳が笑った。