■ 大事なもの4
人目も憚(はばか)らず、わたしは哲也にギュウ〜…っと抱き着いた。
そんなわたしをしっかりと受け止めてくれる哲也。
わたしの髪に何度も何度も唇を落とす。
『不安にさせるな』
「あぁ」
『ノリの名前言うなら、ゆきみってその倍言って』
「もうゆきみしか口にしねぇ」
『もうこんな気持ちは嫌だよぉ…』
「もう絶対ぇさせねぇから」
『次はないから…』
「約束する」
『次は…――――』
直人の所にいっちゃうから…
その言葉は口になんか出来なくて。
哲也の胸に埋めていた顔を上げた。
「………」
『好きよ、哲也』
「好きだ、ゆきみ」
強く強く抱きしめられる。
隙間がないんじゃないかってくらい、哲也の全身がわたしを抱きしめる。
大きな大きなクリスマスツリーの周りを囲む恋人達は皆、その二人の世界があって、わたしと哲也もそう。
そこに何があろうと、誰に見られようと関係ない。
今、離れたくないって気持ちしかなくて…
夢中で繰り返される哲也のキスに酔いしれる――――