■ 大事なもの2
わたしを下ろすとそのまま手を繋いで公園の真ん中にある大きなツリーの下で止まった。
ツリーを見上げるわたしの前、哲也が大きく息を吐き出した後、ゆっくりと薄い唇を開いた。
「ノリちゃんが好きな訳じゃねぇ…けど、ノリちゃんの所に行かせたくねぇ…って気持ちは、ある。つーか相手がノリちゃんじゃなくてもチームを引退した奴の所にはもう行かせる訳にはいかねぇから…だからああ言った。…それがゆきみを傷つけるって事まで考えなかった、ごめん…俺が悪い」
一ミリもわたしから目を逸らさない哲也。
胸の前ら辺で重なり合うわたしと哲也の手に力が込められる。
嘘のない哲也のその言葉は、わたしに安心感を与える。
ノリを大事に思っている事もわたしは十分分かっている。
それが哲也だって。
『うん』
「ゆきみは俺の女だ」
『…―――哲也』
「ん?」
『わたしにとって今、大事なもの…分からない?』