■ スレチガイ9
「すいませんでした」
『直人が謝ることないよ! ゆきみは、直人が一緒にいてくれて助かったって思ってるよ。哲也くんがあんな事言ったから、少なく共哲也くんに会いたくなくて直人の所に来たんだって…』
あたしだって、タカヒロにあんな事言われたらケンチに逃げたくなっちゃうよ。
そんな女心をタカヒロも哲也くんも、分からなさすぎ。
反抗したあたしにキョトンとした視線を向けるタカヒロと直人。
気持ちが通じ合えない事に苛々する。
あたしに向かって何かを言おうとしたタカヒロの言葉を遮って…『直人の方がよっぽど分かってるよ』そう続けた。
予想外だったらしいあたしの言葉に、タカヒロの眉毛は気持ち下がって見える。
「あー…悪い、奈々の言う通りだ」
タカヒロの手があたしの髪を撫でた。
別にあたし達が喧嘩をする事はなくって。
一瞬でこうやってそれをあたしに分からせるタカヒロを、すごいと思った。