■ スレチガイ8


『直人、ありがとう』


「え?」


『ゆきみの傍にいてくれて』


「自分が傍にいたかっただけっすから」



今日ほど直人がいてくれてよかったと思わずにはいられない。


ついカッとなって、哲也くんに着いて行ったけれど、本来あたしはゆきみを追い掛けるべきだったのかも。


そんな後悔ばかりが頭を過ぎってしまう。


独りで泣いていたゆきみを思うと、とても胸が痛い。


泣き疲れて寝ちゃうまで独りにした事を悔やんだ。


結局あたしは、自分が幸せを掴む事も重要だけど、同じぐらいゆきみが幸せであってくれなきゃ嫌なんだって。



―――だからあたしは許さない。


ゆきみを傷つける事になった、ワタルを絶対に許さない。



「直人、あんま掻き乱すんじゃねぇーぞ。ゆきみちゃんは哲也のもんだ。自分の置かれてる立場もっとよく考えろ。…ゆきみちゃんがお前んとこに来るなんて奇跡はねぇーんだかんな」



しっかりと直人を見据えてそう言うタカヒロは、あたしがあまり聞かない低い声。


正論なのかもしれないけど、間違っていないのかもしれないけど…


今、直人に対してそんな風に言ってほしくなかったよ。



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