■ スレチガイ4
【side 奈々】
タカヒロとVIPを出ると、直人の影に隠れて眠っているゆきみの姿があった。
あたしは駆け寄って…
『ゆきみ』
スヤスヤ眠るゆきみの頬には、うっすらと涙の後が残っていて、それだけで悲しくなった。
散々哲也くんに罵声を浴びせて喚き散らしたあたしは、戻ってきたタカヒロに止められた。
タカヒロは哲也くんに何も言わなかった。
それが男のプライドなのか何なのかは分からないけれど、ゆきみの傷ついた気持ちをあたしが理解してあげないとダメだって思う。
あたしだけは、ゆきみの気持ち分かっていてあげたいんだ。
『哲也くんは?』
「ここにはいないっす。たぶん外じゃないかと…」
直人の左手はゆきみの右手をしっかりと握っていて、そこに何かがあるとは思わないけど、今はゆきみ、哲也くんの顔も見たくないんじゃないかなって思う。
『タカヒロ…。ゆきみ、あたしの家に連れて帰りたい』
「ゆきみちゃんが望むんなら。…つーか奈々さ、今日何の日か分かってる?」
声のトーンが下がったから、隣のタカヒロを見たら少し拗ねた横顔。
ソファーにドカッて座ってポケットから取り出した煙草を加えた。