■ スレチガイ3
「飲んじゃった…」
『え、わたしのじゃないの?』
「うん、ゆきみのだけど」
『え、ダメだった?なに?』
そう聞くわたしの手を、不意に直人がテーブルの上、両手で握りしめた。
一気に距離が縮まった事に、胸がドキンと音を立てる。
「それ俺に惚れるように魔法かけといたから」
直人らしくないジョーク。
チュッ…
わたしの手にキスをする――――
赤い髪の直人は、髪型も哲也とうりふたつで、身長や体格もよく似ている。
煙草の吸い方や、歩き方、全ての仕草さえもそっくりで。
わたしを見つめる優しい瞳すら、哲也とそっくり。
まるでそこに哲也がいるかのよう。
今こうしてわたしを楽しませてくれているのは、哲也かのよう…
「メリークリスマス…ゆきみ」
耳元でそう囁いた直人の言葉に、涙が溢れた。