■ スレチガイ2
バーのドアを開けると、ドアの目の前、わたしを待っていたんだろう直人。
わたしを見て優しく微笑んだ。
「お腹、大丈夫?」
そう言って伸びてくる直人の腕。
わたしの頭にポンと触れて髪を撫でた。
『うん大丈夫。…直人、奈々は?』
「奈々さんとタカヒロさんはVIP。ケンチさんは、気づいたらいなかった」
『そっか。せっかくのイヴなのにね、今日』
「俺はゆきみがいればそれだけで嬉しいよ」
直人のストレートな言葉は、いつでもしっかりとわたしの心に入ってくる。
肝心な時に欲しい言葉をくれるのは、やっぱり直人なんだと思ってしまう。
それでもわたしはそれに応える気力さえも失いかけていて。
どうしたらいいのか、答えが見つけられずにいる。
カウンターに座っていた直人を置いて、わたしは奥のソファーに移動した。
続く直人は、わたしの好きなカルピスを持って隣に座った。
スッと目の前に出されたグラスを手に取って、グビッと飲み干した。
カチャン…とグラスをテーブルに置くと、直人がニコッて笑った。