■ 傷口10
落胆している哲也くんの背中を睨みつけてあたしは一歩前に出た。
『なんであんな事言ったの?』
怒りが絶頂までくると、人間は自分でも吃驚するくらい低い声になるみたいで。
あたし発信の声に困惑した哲也くんの瞳が重なった。
「え?」
悔しくて。
あたしだってゆきみの事すごく大事に思っているのに、ゆきみを守りきれなかった自分が愚かで情けなくて、悔しくて…涙が出る。
『哲也くんが守りたいのはゆきみでしょう!なのに、なんでノリの事っ』
グイッと手首を握られて、哲也くんがあたしを引っ張って行く。
「哲也さんっどこにっ?」
振り返ったらケンチの心配そうな瞳と目が合って。
それでもケンチの言葉も無視する哲也くんは、チームみんなが見る中、あたしを地下のVIPに連れて行った。