■ 傷口7


「随分泣きそうな顔してんじゃねぇか、ゆきみ…」



そっとしておいてほしいのに。


わたしの事なんか、気にかけてほしくないのに。


ほら、また哲也が振り返る。


振り返るのに、わたしの言葉を否定すらしてくれない哲也を酷いと思ってしまうんだ。




「ゆきみに手出したら、俺がお前を殺す」




真横から直人の低い声が聞こえた。


いつもいつも、欲しい言葉をくれる直人。


やっぱりわたしは哲也を見れないんだ。



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