■ 傷口6
「で、誰だよタカヒロの女…ゆきみ、お前は違げぇーの?」
どうしてワタルは人の傷を蒸し返すんだろう。
どうして哲也はわたしには何も言ってくれないんだろう…
「ゆきみはオ…
『直人だよ! わたしの相手は直人だよ!』
グイッ…
わたしの腕を掴んで離さない直人の腕に巻き付いてそう言った。
すぐに直人の腕がわたしの肩に回されて…
哲也がどんな顔をしているのか、どんな気持ちなのか…
考える余裕がない
それくらいわたしは傷ついた。
同時に、哲也の中からノリを追い出す事が出来ずにいる自分自身を呪いたい。
「直人か…じゃあゆきみも興味ねぇな」
そう言う割に、ワタルの視線はわたしを見ていて。
哲也はもう、正面を向いていて、わたしを見てはいない。
直人が同じ髪の色でよかったなんて思ってしまう。
わたしと同じ色の髪の直人。
それは、哲也も同じで。
なんかもう…この先、わたしはどうやって生きていけばいいんだろう。