■ 傷口4
【side ゆきみ】
一瞬哲也の言った意味が分からなかった。
分からなかった、というよりはそう…―――信じられなかった。
この期に及んでまだ、哲也はノリを守っていて。
チームとしては当たり前の事なのかもしれない。
しれないけど、今この場でわたしはその言葉を聞きたくなかった。
そうやっていつまでも、どこまでもノリを守る哲也をちょっとだけ切なく思えて。
そんな哲也しか愛せない自分を、酷く哀れに思った。
だから、今まで哲也がくれた言葉が全部嘘のような気さえしてくる。
わたしを隣に置いてくれる事さえ、哲也の同情なんじゃないだろうか。
――――本当は哲也、ノリを愛しているんじゃないだろうか。
わたしはどうしたらいいんだろう。
頭の中が真っ白になったみたいに、わたしは視界が狭まっていく。
「ゆきみさん?」
聞こえた声は直人のもので、強くわたしを支える逞(たくま)しい腕も直人のもの。