■ クリスマス前夜祭8
「直人っ」
タカヒロが叫んだ声が小さく直人を呼んでいて、直人はすぐにタカヒロの所にかけて行った。
車に乗り込むタカヒロに頭を下げると、直人は遠慮がちに奈々の手を引いてわたし達の所に戻ってきた。
『…真っ赤』
ポロッと出た言葉通り、奈々の顔は真っ赤で、恥ずかしそうに俯いている。
「こいつで我慢してやって」
哲也の手がわたしの頭に乗っかって。
『十分だよ』
そう言って笑う奈々に、わたしも哲也も、直人もケンチもみんなが笑った。
それからわたし達は季節外れの花火で盛り上がっていて。
すっかり忘れていたその¨音¨を耳にしたのは、タカヒロがいなくなってから30分程度しか過ぎていなかった。