■ クリスマス前夜祭7
「哲也、後頼んだぞ」
『どこ行くの?』
「先代に呼ばれてっから顔だけ出してくる。安心しろって、すぐ戻るから」
タカヒロが車に向かって行く後ろ姿に、奈々が立ち上がって着いて行く。
タカヒロの腕に絡み付いて何かを言っていて。
でも、青倉庫はバイクと車のエンジン音で騒々しくて、二人の会話なんて聞こえやしない。
だからわたしは瞬きもしないで二人の光景を見つめた。
沢山のテイルランプに照らされている奈々達は、わたしを含めたギャラリーの前、ゆっくりと近づいて…
『んっ!?』
そう声を出したわたしの目に又、寄り添う二人のシルエットが映る。
カァー…
人のラブシーンってどうしてこんなに照れるんだろ。
自分だって同じ事やっているってゆうのに。
隣の哲也は「興味ない」って顔で煙草を吸っていて。
直人は慌てて目を逸らして。
―――ケンチは、何も言わずにただ、二人を見つめていた。
その瞳は真っ直ぐで、胸が痛い。