■ クリスマス前夜祭3


『わたし、ここ。哲也はこのブランドが好きなの』



恥ずかしそうに俯くゆきみはめちゃくちゃ可愛い。


哲也くんの喜ぶ顔が目に浮かぶ。


クルッと振り返ったゆきみの視線は、ケンチであり直人であって。


タタタタ…と小走りで直人の隣、腕を掴んだ。



「ゆきみさん?」


『直人、ケンチも!絶対お店の中まで来ないでよ。命令だから!破ったら哲也にあることないこと言いつけるからっ』



そんなゆきみの行動に、あたしは向けた視線がケンチと絡み合って。


顔を見合わせたあたしとケンチは、思わずプッと笑った。



「でも」



ゆきみの懇願に困惑声を出すのは、やっぱりな直人で。



「分かった、ゆきみちゃん。店には入らねー。だから行っておいで」



ポスッてケンチの大きな手がゆきみの頭に軽く触れると、ゆきみは直人を一瞥してゆっくりと手を離した。



『よしっ、奈々行くよっ』



グインッと腕を引っ張られてちょっと照明の暗い店内に入って行く。


振り返ったそこには、ケンチが小さく手を振っていて。


直人のちょっとだけ納得いかないって顔が見えた。



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