■ 友情という名の愛情5


【side 奈々】




『嬉しい…』



大切な人達にそう言われることも、ゆきみと同じ気持ちでいられることも、何もかもが嬉しくて。


友達と呼べる人なんていなかった高校生活の始まり。

裏切りや親父の暴力もあって、あたしの人生なんてどうだっていいってずっと思って生きてきた。

でも、ゆきみに出逢って…タカヒロに助けて貰って…oneに入って…タカヒロを好きになって…タカヒロに愛されて…―――――

あたしの人生捨てたもんじゃないって思えた。


諦めないで生きていれば、きっといつか運命の人に出逢って幸せになれるんだって、今は胸を張って言える。




冬の青倉庫は陽が落ちるのも早くて、あっという間に空は真っ暗闇に包まれる。

同時に倉庫内に明かりがつけられて、あたし達は今日も暴走に胸躍らせる。


こんな風にあからさまに悪いことをしているのは十分承知で。

でも、暴走族に入っていないからって、一般人の方が正しいか?と言ったらそれは違うわけで。

何が正しくて、何が間違っているのか、あたし達は日々その壁を乗り越えながらこれからも成長していくんじゃないだろうか。

あたしも出逢った頃より成長できていれば嬉しいな…

なんて感傷に浸っていたらタカヒロたちが青倉庫の中をバイクで走り回っていて…。

滅多にしないその行動に思わずゆきみと二人目を見合わせた。

ケンチや直人はわりとよく見かけるけれど、タカヒロや哲也くんがチームの子と戯れているのなんて、初めて?ってくらい珍しくて。

笑っている二人を見て、自然とあたし達にも笑顔が零れる。


『何か楽しそう』


あたしがポロッと言葉を零すと『うん、行こう奈々!』ゆきみがあたしの手を掴んで輪の中心にいるタカヒロと哲也くんの所へと駆けていく。

当たり前にあたしとゆきみに道をあけるoneのチームメイト達。



『哲也乗せてっ!』


ゆきみが言うと、バイクを止めてあたしと繋がっていない方の腕を掴んで自分に引き寄せる哲也くん。

でもその瞬間あたしの後ろから甘いタカヒロの温もりに包まれて。


「おせーよ奈々」


可愛いヤキモチが飛んできた。

あっちでケンチと直人と話してるのちゃんと見てたんだって、ちょっと可笑しくて。


『ごめんね』


素直にそう言うあたしの首に腕をかけてチュッと小さなキスを落とした。

でもすぐにハッとした顔で至って普通の哲也くんとゆきみを見て苦笑いをこぼした。


「理性のねぇ哲也みたいじゃねぇか俺としたことが」


そんなことを言うんだ。

思わず笑っちゃって。


「変態だなぁ〜マジでタカヒロのやろう!行こうぜゆきみ」


そう言って哲也くんはゆきみを後ろに乗せるとエンジンをかけて、青倉庫を出て行ってしまう。


「待てよ哲也!!」


慌ててあたしを乗せたタカヒロのバイクが追いかけて青倉庫を出て行く。

風をきって走るバイクの後部座席。

前を走る哲也くんとゆきみにすぐに追いついて、倉庫の周りを一周して青倉庫にもどると、各チームの総長たちが待ち構えていた。

間もなく始まる八代目の暴走。

今日もあたし達は希望に満ち溢れている。



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