■ 友情という名の愛情4
「奈々さんも俺の憧れっす」
フワって軽く抱きしめ返す直人に、「おいおいおい」剥がされた腕はケンチのもので。
「お前どさくさに紛れて何抱きしめてんだ?」
ジロっと直人を睨むケンチ。
でも直人は余裕で。
すぐにわたしの横に戻ってくる。
「いや、すいません…」
『あはは、素直!』
わたしが笑うと唇を尖らせて直人がわたしを覗き込んだ。
その距離の近さにドキっとして。
奈々に背を向けていた直人だから、今ちょっとキスしたように見えたんじゃないかって…
「隙だらけだよ、ゆきみさん」
『…直人?』
「俺…幸せだったよ」
まだわたしを覗き込んだまま直人がそう言う。
「ほんの少しだけどゆきみさんの1番傍にいれて…もうそれ以上望めねぇ…ってくらい」
直人の瞳は相変わらず優しくて、やっぱりまだ少しドキドキする。
何も言わずに見つめるわたしにニコって微笑む直人。
「もしもね、ゆきみさんが俺に少しでも気を許してたら…俺絶対手出したと思う。力ずくでも何でも俺のもんにしてたって。けどゆきみさんから哲也さんが消える瞬間なんて一度もなくて。だから抱けなかった」
そう言うと直人はわたしを離して、それからちょっと不安気にこっちを見ている奈々とケンチに視線を向けた。
でもそれはすぐにわたしの所に戻ってきて…
こう告げたんだ。
「やっぱ俺、笑ってるゆきみさんが好きっす!」
胸がキュンって痛い。
嬉しさと切なさが交差していてわたしも奈々もちょっとだけ瞳がうるんでしまう。
頭に包帯を巻いたままの直人。
まだ痛々しいその身体はわたしを命かけて愛してくれた証で。
「同感。ゆきみちゃんと奈々の笑顔の為なら…俺らoneは何だってするし、いくらでも強くなれる…」
ケンチがほんの軽く奈々の肩を抱き寄せてそう言った。
嬉しくて…。
本当に嬉しくて…。
たった一人心に決めた相手以外の人にもそう言って貰えることが本当に嬉しくて…。
『『ありがとう』』
わたしと奈々の声が被ったんだ。