■ 友情という名の愛情3
【side ゆきみ】
それから数分のうちに、各チームの総長を引き連れたケンチと直人がこのVIP部屋に入ってきた。
四人だと何も感じないけれど、配下チームを8チーム抱えているoneは、さすがにこのVIP部屋に男が密集していて狭いわけで。
『哲也…やっぱりわたしと奈々外出てるよ…』
思わず言うものの「ダメだ」即答されて。
でもこの部屋みんな煙草吸ってるし、正直超煙くて…
ドアの手前に立っている直人に視線を向けたら微かに微笑んだんだ。
「息苦しいですか?ゆきみさん」
『うん…奈々は平気?』
『うん、大丈夫。でもあたし達聞いててもよく分からないし、ゆきみと二人で外行っちゃダメ?』
奈々がタカヒロにお願いするみたいにちょっとだけ上目遣いでそう言うと、各チームの総長たちが大きく息を飲み込んだ。
言われたタカヒロでさえ、ほんの一瞬止まって…それから哲也に視線を移す。
「3分待て。それで終わらせる」
哲也がそういうから、奈々と顔を見合わせて大人しく頷いた。
色んなことを隠されて嫌だと思っていたわたしの気持ちをこうして汲んでくれた上で、この総長会議に入れることになった。
わたしには何も言わないけど、わたしの中のモヤモヤした気持ちを奈々が分かってくれて、それをタカヒロに言ってくれたんだって、思う。
本当に3分で会議を終わらせたタカヒロたちは、この空気の悪いVIPから出て珍しく青倉庫の中に顔を出した。
『直人、傷大丈夫?』
「はい、もう」
あの日、哲也に本気で半殺しにされかけた直人。
当たり前に哲也を選んだわたしを絶対に責めたりしない直人。
『直人…ごめんね』
「ゆきみさん。分かってる。ゆきみさんの出した答えは間違ってない!俺は、ゆきみさんが手を差し伸べる限り、その手を全力で掴むよ、これからも」
『直人…』
わたしを「ゆきみさん」って呼ぶ直人に少なからず寂しさを感じてしまうけれど、この一線がないと直人はきっとダメなんだと思えた。
付き合っていたことすら忘れてしまいそうなわたしと直人の距離は、哲也と付き合っていた頃と今も何も変わっていないんだ。
「俺の一番はゆきみさんだよ」
『直人…』
「哲也さんに泣かされたら慰めてあげる」
口端を緩めてそう言う直人に、わたしも笑った。
『直人ありがとう』
「ゆきみさんと奈々さんが笑っててくれればそれでいい」
クシャってわたしの髪を撫ぜる直人の手は、いつでも温かくて、だけどわたしが求めているのはこの手の温もりじゃないってことも、よく分かった。
『直人!あたしの笑顔も守ってくれてありがとう』
わたしの後ろから奈々が珍しく直人の腕に巻きついてそう言った。
急に奈々の温もりを浴びた直人はちょっと吃驚したけれど、すぐに奈々を受け止めてニコっと微笑んだ。