■ 友情という名の愛情2
【side 奈々】
もう可笑しくて。
哲也くんがヤキモチ妬きていうのは前から知っていたけど、総長会議も女OKにしちゃうってのが…本当は結構すごいことなんじゃないかって思えた。
ワタルの一件で、タカヒロは歴代総長に呼び出されて、戻ってきた時何発か殴られたような跡があったからこんなことがバレたらまた、タカヒロは呼び出されるんじゃないかって。
それでも哲也くんの気持ちを受け入れて、尚もあたし達のことを守ってくれるタカヒロを、心から尊敬しているし、愛しているんだと。
『今年は本命チョコだけか。ゆきみは!』
そうボヤっと呟いたらグインって腕を後ろに引っ張られて、ソファーの上ストンっと座らされた。
勿論あたしを後ろからギュっと抱いているのはタカヒロで。
「おいおい、ゆきみちゃんだけだと思うなよ?」
そう言うとまだドアの所にいたケンチに視線を送る。
「ケンチ、全員揃ったら直人と一緒に来い」
「はいタカヒロさん」
ペコっと頭を下げて静かにケンチが戻って行った。
「奈々もだ。俺以外に渡したら承知しねぇぞ!」
最近気づいたのは、哲也くんと同じくらいタカヒロもヤキモチ妬きなんじゃないかって。
相思相愛だって噂だったノリのことも、こうしてあたしへの気持ちみたいに妬いていたんだろうか?…時々思ってしまう。
不安になっている訳じゃない。
けれど、ノリと一緒に過ごしていた事実は、変えられない。
今はあたしだけを愛してくれているのは分かっている。
それは、ノリと過ごした時を超えて、今のあたし達があるんだと。
全てが初めてのあたしは、お互いが初めてであるゆきみと哲也くんをほんの少しだけ羨ましく思う。
『タカヒロも奈々には素直だね〜』
「なに、ゆきみちゃん!」
『え〜だって、タカヒロって奈々のことになると、子供みたいだよね、何か』
そう言ってゆきみは哲也くんに同意を求めていて。
「だな。奈々ちゃんのことだと、自分を見失ってやがる。こんな面白いタカヒロは後にも先にも奈々ちゃんの前でだけだぜ」
『本当、奈々のこと大好きなんだね』
あたしの気持ちを無視して続いた会話。
だけどかなり嬉しくて。
こういう些細な会話にタカヒロの愛を感じてしまう。
やっぱりあたしの幸せの元にはゆきみが存在しているんだって思わずにはいられない。