■ 大切な笑顔3
「俺の全てはゆきみだけだ。この先何があっても俺の気持ちは変わんねぇ…本気だ。…いいか?」
『……』
「例え何があっても、俺はゆきみだけだ。…何があってもだ。これがその誓いの印」
そう言って哲也はサラシの下にあるわたしの腕についているタトゥーと同じものを見せたんだ。
クリスマスイヴのあの日、哲也がわたしに言ったその誓い。
忘れていたわけじゃないけれど、今更ながらその言葉の意味をちゃんと理解したのかもしれない。
わたしの手を掴んでそこに押し当てると哲也の心音がして…思った以上に早いその振動に思わず哲也を見上げた。
「ゆきみが思うよりも俺はゆきみを愛してる…俺にはゆきみしかいねぇから」
『哲也…』
「帰ろうぜ、俺達の家に…」
『うん…うん…一緒に帰る…』
「もう泣くな。安心しろよ、もう二度とゆきみを一人にさせねぇ…ずっと死ぬまで傍にいてやる」
ポンって哲也の手がわたしの髪を優しく撫ぜた。
零れる涙を拭う哲也の指はさっきとはうってかわって温かくて、この温もりを一生離さないって心に誓うんだ。
『哲也…愛してるよ』
そう告げると、振り返ってちょっと困ったように眉毛を下げた。
「それ家で言えよ。抱くの我慢してんだけど俺…」
『だからキスしないの?』
「そう。100%ここで抱くよ?」
『それは…困る』
「だろ…」
『早く帰ろう!』
腕に絡みついてそう言うと、目を細めて笑うんだ。
「やる気満々じゃねぇか!」
まるでここにタカヒロと奈々がいるかのような空気だった。
全てにおいて哲也がいないとわたしの人生ないも同然だけれど、常に奈々であり、oneの仲間が傍にいるってことが、奇跡のような運命なんじゃないかって。
ワタルのしたことは正直許せないぐらい腹が立ったけれど、確かに今日わたし達の前で涙を見せたワタルは、真実を受け止めて自分のしてきたことを後悔したはず。
もしかしたらワタルはこの世界から足を洗うかもしれない。
そうやってみんな少しずつ大人になっていくのかもしれない。
ワタルがoneに不穏な空気を巻き込まなければ、奈々も哲也も直人をも傷つけることはなかったのかもしれないけれど、今回の件でわたしは分かったんだ。
哲也の無茶な行動も、わたしを巻き込まないようにって色々隠すことも、全てはわたしの為なんだって。
直人で補えると思っていた心も、間違いだったと。
わたしには世界中どこを探しても、哲也以上の人はいない…―――――それがこの身を持って分かったんだ。
この先また迷うこともあるのかもしれない。
でもそこにはそう、わたしの幸せをいつでも願ってくれる奈々がいる。
だからわたしは、また笑顔になれた。
やっぱりわたし達、幸せになるために出逢ったんだね…。