■ 許せる人4
【side 奈々】
泣き崩れたワタルに近づいたのはタカヒロであり、哲也くんで。
「もう止めろ、馬鹿なことは」
肩に触れる訳でもない。
背中を撫ぜる訳でもない。
でも、ワタルの両サイドにしゃがみ込む2人は優しさで溢れていて。
今までワタルのしてきたことを考えるのなら、普通なら許されない。
多大な迷惑をかけられて。
人としてワタルが更生する約束でもしてくれないと、野放しになんかできやしない。
でも、一人の男として美咲を愛した想いは本物で、その愛だけは認めてやりたいと思うんだ。
結局タカヒロであり哲也くんでありゆきみは、人が新たな一歩を踏み出そうとしている時には、必ず手を差し出して背中を押してあげられる人なんだって。
それがどんなに酷いことをされた相手であっても。
―――――許せる人なんだと。
あたしも、人を許せる人でありたい。
「悪かった…」
泣きながらワタルが小さく呟いた。
あんなに恐れていた存在の人でも、心を持っているってことが、ほんの少し嬉しい。
人間だから、間違えてしまうこともある。
でもその間違えを認めて、真実に向き合う勇気があれば、何度でもやり直せるんじゃないかって、あたしは思うんだ。
それをあたしは、このチームoneに教えて貰った。
それだけで、出逢った意味があるんだと。
青倉庫に平和な日々が戻る、そう感じた。