■ 許せる人2


7代目の女、恵理とここにいる美幸は一体…

チラリと哲也を見ると、わたしの視線に気づいてすぐに視線を向けてきた。



「この二人は…ゆきみと奈々ちゃんと同じダチだ」



低い哲也の声に奈々と二人、泣いている美幸達を見つめた。



「恵理が、恭司さんの女だって分かった日から…美幸は恵理と距離を置きだして…そのまま手術の準備に入ったから高校も辞めてる。それっきり…そうだろ?」



何もかも分かったような哲也の言葉に、美幸のすすり泣く声が小さく重なる。

コクっと小さく頷く美幸に対して、まっすぐ美幸を見つめる恵理は、怒っているようでもなく。



「あたしが美幸の異変に気付かないわけないじゃない…もう」



そう言ってスッと美幸の頭を撫ぜた。

顔を上げた美幸は大粒の涙を零しながらも恵理を見つめていて。



「お姉さんに全部聞いてた。美幸のこと…ごめんね一人で抱えさせて…あたしに少しでも勇気があれば、美幸の傍にずっと入れたのに…」

「恵理…?」

「何もしてあげられなくてごめん」



深く頭を下げる恵理に、首を振る美幸。



「私のせいでワタルさんに狙われたのよ…私のせいで…」

「ばっか、違うよ!それにあたしはちゃんと生きてる。犠牲になったのはアキラだ…」

「…でも…私何もできなかった。ワタルさんを止めることも、恵理に忠告することも、なんにもできなかったのよ…」

「…あたしは、美幸が元気で生きててくれることが、一番嬉しいんだよ!!」



ポンって頭をまた撫ぜる。

きっと恵理の手は奈々と同じぐらい温かいんだって。

感情移入…までいかないものの、胸の奥がぐっと熱くなった。

同時に、隣にいる奈々の手を掴もうと伸ばしたら、まるっきり同じように奈々がわたしの手を掴もうとしていて…小さく微笑んだんだ。


何となく、さっき美幸が言った「羨ましい」って意味が分かった気がする。

きっと状況が反対だったとしても、わたしも奈々の為に同じことをしたんじゃないかって思えるから。

わたしが哲也を裏切って直人の女になったって世間では広まっていて。

この嫌な空気を奈々が見過ごすわけもなく。

だからあえてチームみんながいる前でわたしの誤解を解いたんだって…今ならこの状況をよく理解できる。

そして、それをする為に、この先一生誰にも言うつもりのなかった真実を、みんなの前で話してほしいと…

わたしの為に何度も頼みに行ってくれた奈々を愛おしく思うんだ。

だから奈々が新学期になっても学校に来なかったんだって…それが今やっと分かった。

全部わたしと哲也と…直人の為に動いてくれていたんだって。

目の前で繰り広げられている美しい友情が本物だって分かってる。



でも―――――――わたしと奈々以上の絆は、世界中どこを探したってどこにもない…そう確信できるんだ。


わたしと奈々は一緒じゃないと生きていけない…

そんな唯一無二の相手に出逢えたことを、感謝しないと。



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