■ 大きすぎた壁3


「ワタルはこの人が誰だか分かるだろ?」


そう言った哲也。

みんなの視線がわたしの左側にいたワタルに向かってて。

その女の登場に動揺を見せたのはわたしだけじゃなかったのかもしれなくて。

もしかしたら奈々は今から起きることをある程度分かっているのかもしれない。

だからわたしがどうなってもいいように、こうして傍にいてくれているんだって。

それがわたしの求めている真実とは違っていたとしても、握られたこの手を離したくない…そう思うんだ。


「知るかよ、んな女…」


そうワタルは呟いたけれど、その声から微かに動揺が見え隠れしている気がする。

でも、女に対する敵意みたいなもんはなくて、そう……「ごめんなさい」頭を下げた女に、ワタルの動揺が大きくなった気がした。


「全部私のせいなんです、ワタルさんをこうしてしまったのは…」


ポロっと溢れた涙と、女が発した謝罪。

真実の全貌が今明かされるんだと。



「姉の美咲が本気で愛したのはワタルさんただ一人でした」


美咲…って確か、ワタルの相手!?

直人がそう言ってた気がして、後ろにいた直人を振り返るとわたしをしっかりと見ていて、でもその瞳は複雑に揺れている。




「ですが、姉の美咲は暴走族チームoneの六代目総長だった潤平さんと結婚しました。全ては私のために…」



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