■ 一番大事なもん4


「ゆきみ、ごめん」

『いいって。直人は特攻だから仕方ないよ。わたしは適当に後ろ乗せて貰うから大丈夫だよ』



ケンチと二人、特攻の直人は、暴走の先頭を走って道を切り開くのがお役目で、信号もブッチして走るから、当然ながら女を乗せる危ない真似はできない。

二人が特攻になってからは、哲也はだいたいが車で、だからわたしを隣に乗せてくれていて。

でも、今日は哲也がいないから…



『わたしもう哲也の女じゃないから狙われないし…』

「ゆきみ…頼むから…」

『本当に平気だよ、直人…』


心配する直人をよそに、わたしは近くを通りかかった下っ端くんの腕を掴んだ。

この子は、広臣。

エリー達と絡んでいる子の一人で。



『広臣、わたしを後ろに乗っけて?』



キョトンとわたしを見下ろす広臣。

驚いているというかはそう、「へ…?」固まっている。



『あ、広臣はユカリか…』

「いえ、今日はいねぇっすけど…」

『ほんと?じゃあ後ろ乗せてよ?』

「え、オレがっすか?」

『そうよ。イヤ?』

「まさか!!!」



そう言うと、直人が広臣の胸倉をグワっと掴んだんだ。

壁に広臣を追い込めて…



「てめぇ、ゆきみに何かあったらただじゃおかねぇぞ。絶対安全運転しろ。あと、サツにも捕まるんじゃねぇぞ!分かったか!?」

「ハッ、ハイッ!!」



素直に返事をする広臣に直人は掴んでいた特攻服を離してわたしに視線を向けた。



「何かあったら飛んでくっから、すぐ連絡して」

『うん。気を付けてね?』

「ああ、心配すんな」



クシャって直人はわたしの髪を撫ぜると、そのままわたしから離れて行った。




それが、わたしと直人の最後になるなんて、思いもよらないんだ…―――――――



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