■ 親友6
「タカヒロさん」
サッと、ケンチの手が一瞬であたしから離れた。
それに気づいているのか、いないのか、涼しげな顔でタカヒロはケンチに視線を向ける。
「具合はどうだ、ケンチ」
「はい。おかげさまで、もう動けるっす」
そう言って自分の腕と足をベッドの上でバタつかせるケンチに、タカヒロが優しく微笑んだ。
「そうか。来週には合流してほしい」
「もちろんっす」
あたしの分からないタカヒロとケンチの目の会話。
女はいつだってお荷物なのか…と、思うけど…
『タカヒロ…』
「分かってる」
『え?』
言葉を遮られたあたしはキョトンとタカヒロを見上げていて。
「オレが守ってやるから。絶対ぇオレから離れるんじゃねぇぞ」
それはもちろん、oneの総長の顔だったに違いない。
けれど、タカヒロがあたしだけに見せる優しさも含まれていたことに気付いた。
哲也くんの守り方が間違っているとは一概には言えないけれど、こうしてタカヒロがくれるこの言葉はちゃんとあたしをチームの人間として信用してくれているんだと、実感できる。
きっとタカヒロの負担になってしまうということも、分かっているけど。
この選択を与えてくれたタカヒロは、やっぱりあたしが好きになった男だと誇れるんだ。