■ 親友5


【side 奈々】




『ケンチ〜』



学校に行く前と、帰りには毎日ケンチの所に行くのが日課になっていた。

あたしの声に携帯をパチンと折り曲げてニッコリ笑顔をくれる。



『電話?』

「何でもねぇよ」

『…直人?』

「え?」

『直人と連絡取ってるの?』



あたしの言葉にほんの少しバツの悪そうな顔を見せるケンチ。

あたしだってケンチが嘘をついているか、そうじゃないかぐらい分かるようになっちゃったんだから。



「…ゆきみちゃんと哲也さん…」



さすがにケンチの耳にも入っているか。

あたしはベッドの横にある椅子に座ると小さく頷いた。

ケンチが動けたら直人ももっと色々探り入れられるんだろうなって。

そしたらゆきみと哲也くんも戻れるようにって…



『…直人を手伝ってあげて…お願い…』



頭を下げるあたしに「分かってる」そう言うケンチ。

その顔を見れば分かる、病院のベッドの上であろうと、ケンチが動いていることも。



『ケンチ、何か知ってる…?』



だからそう聞いたあたしに、その質問から逃げるように目線を外した。

こういう時はたいてい何かを隠していて。

そしてそれが危険な時ほど、ケンチがこういう顔をするということも。



『ずるい』

「え?」



困惑した表情でケンチが首ごとあたしに向けた。

ジロっとケンチを睨むあたしに苦笑いを見せるけれど…



『知ってること全部教えてよ。ゆきみが苦しんでいるのにあたしだけ何もできないなんて嫌だよ…』

「………」

『あたしだってoneだよ』

「分かってる」

『分かってない!分かってないよ!!』

「奈々、落ち着けって」



興奮してシーツを握るあたしの手を、そっと上からケンチが握った。

トクンと胸が脈打つ。


ほんの一瞬見つめ合った次の瞬間、ガラっと病室のドアが開いて、タカヒロが入ってきたんだ。



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